※このお話は 黎深+邵可 です。

続・夏小話(黎百+絳攸)の続編です。
なお「黄金の風」のネタバレを含みます。





「………それでこんな大量の花を君はどうするつもりなんだい?黎深」
「もちろん秀麗に贈るのです兄上!」

自信満々に言い切った弟をつくづくと眺めて、邵可は額を押さえた。
先日邵可邸には秀麗宛に匿名希望さんから大量の彼岸花が届けられた。
その花がようやく片付いたと思ったら、これである。

「主上といい君といい………なんでこう極端に走るかなぁ」
「あの洟垂れ小僧と一緒にしないでください。秀麗への愛は私のほうが万倍もまさっています」
「そうかい?どっこいどっこいだと私は思うけどね」

単純さ具合もね。
酷いことをさらりと付け足して、室に入りきらず廊下まで侵食している花籠を指差してみせる。

「―――とにかくこれは持って帰りなさい。君は私の邸を花で埋めるつもりかい?」
「兄上がお望みなら彩雲国すべての花を集めてみせます!」
「いや、望んでないから」

黎深ならやりかねない。
有限実行とばかりに影を呼ぼうとした弟を、邵可は手を上げて止めた。

「君の熱意はわかったから、二人がもどってくるまでに邸を元通りにしなさい」

ものには限度というものがある。
主上もそうだが、この弟もそのあたりのことがちっともわかっていない。
行過ぎた行為は迷惑にしかならず、厳しい表情で顔をしかめた邵可に、立ち上がった黎深があせったように言い募った。

「でででも兄上。これは私の秀麗への想いの証拠であって………」
「それはよく分かってるよ。でもね黎深。ようやくこの間匿名希望さんからいただいた彼岸花をご近所さんに配り終わえたところなんだ。可愛い秀麗にまた同じ手間をかけさせるのは忍びないと思わないか?」
「それはそうですが―――」
「それとも君が叔父として名乗り出るかい?直接贈るというのなら話は別だけど」
「…………………兄上は意地悪です」

それができたらこんなコソコソと張り合うような真似はしていない。
しょんぼりと肩を落とした弟を見つめ、邵可はにっこりと笑った。

「―――では持って帰るということで、いいね」

念を押せば、扇に顔を隠した黎深がコクリと頷く。
意気消沈している弟を眺めながら、やれやれと邵可は眉を下げた。

(しかたのない子だなぁ―――)

氷のときは門から入らないという大前提があったため、そのまま引き取らせた。
けれ同じことを繰り返すはさすがに可愛そうかもしれないと思う。
はた迷惑な珍行動ばかり取る弟ではあるが、すべて好意から生まれたものである。
そのことを十分承知しているだけに強固に断ることがしのびなく、縁から覗く黒い瞳に優しく微笑みかけた邵可は、「でも」と手近の一籠を指差した。

「―――この一籠だけはもらっておこうか。これぐらいなら秀麗も喜ぶと思うしね。………そしてこれは私から君に」
「私に?」

引き寄せた籠から一厘差し出すと、受け取った花を黎深は不思議そうに見下ろした。
時鳥草の花言葉を知っているかと訊けば、いいえと首を振る。

「時鳥草の花言葉は「永遠にあなたのもの」というんだ。君のものになることはできないけれど、君が私の傍にいる限り、私も君の傍にいるからね」
「兄上………!」

まさかそんなことを言ってもらえるとは思わなかった。
大好きで大好きで大好きな兄からの思わぬ贈り物に、感極まった黎深は瞳を潤ませる。
いまにも泣き出しそうに顔をゆがめた弟の肩にそっと手を置いて、邵可はだからと微笑んだ。

「あまり突拍子もないことをしないでおくれ。そんなことをしなくても、君の傍から離れていくことはないよ」
「はい」
「よかった。それでは茶でも飲もうか」
「いただきます!」

元気を取り戻した弟に、最近新しく調合したんだと特別製の父茶をにこにこと振舞う。
その日の父茶は日ごろの倍の苦味を有していたが、黎深は邵可への愛のみで何倍もおかわりをした。




コネタ帳に書き散らしたものをまとめました。
邵可様難しかった…。
無駄に続きます。


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