氷騒ぎから数日。 絳攸が宮城からもどってみると貴陽紅家本邸は大量の花で埋まっていた。 「戻ったか絳攸」 「れ黎深様…これはいったい…」 花を満載した籠が玄関を埋めつくさんばかりに置かれている。 その中央で満足そうにパタパタと扇を動かす養い親を見つけた絳攸は、表情筋を引きつらせながらもとりあえずこの異常な事態の説明を求めた。 「あの洟垂れ小僧が秀麗に花を贈ったときいた。この私をさしおいておこがましい。それで貴陽中から取り寄せたのがこれだ」 「………。………。そうですか」 扇で指し示された花は、一見小さなユリのようにみえる。 紫の花弁には薄く斑点が散っていて、なかなか可憐でかわいらしい花である。 夏の終わりから秋にかけてよくみかけるこの花は、確か時鳥草という名前だったはずだ。 けして珍しい花ではないけれど、それにしてもよくまぁこんなに大量にと呆れ半分感心半分で眺めていると、嬉しげに扇を閉じた黎深がいそいそと言った。 「そういうわけだ。私はこれから兄上の邸にいってくる。留守をよろしくたのむ」 「………。………はい」 ついこの間も主上に張り合って巨大な氷塊を贈りつけ、邵可にすげなく断られたことをもう忘れてしまったのだろうか。 まず間違いなく今回も持って帰れといわれるだろうことは簡単に予測がついたが、黎深のご機嫌な様子に出しかけた言葉を喉の奥に押し込める。 軽い足取りで軒に乗り込んだ養父を見送った後、家人が次々と荷車に花籠を積んでいくのを眺めながら、それにしてもと絳攸は思った。 確か時鳥草の花言葉はたしか――― (永遠にあなたのもの………) ………。 …………。 ……………。 さほど間違っていないのかもしれない。 無駄に続きます。 モドル/ ススム |
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