小人楸瑛のアエリ/エッティパロです。

が。

メインは子絳攸とか…。借りぐらしどこいった。
しゅうえい及び楸瑛成分はどうぞ脳内で補完してやってください〜。
すいませんっ!

本文は↓からどうぞ!
























「絳攸、いいことを教えてあげようか」
慣れない屋敷で迷わないように、手を引いてくれていた百合さんが、笑顔でぼくを振り返る。
なんですか? と目を瞬くと、あたりを伺うようにした彼女は、しゃがみこんでぼくの顔を覗きこんだ。 念を押すように、人差し指を顔の前でピッと立てる。
「その前に。いい? これは私と絳攸だけの秘密よ。守れる?」
「はい。もちろんです!」
百合さんの言う「いいこと」が何かは分からない。
けれど大好きな彼女が秘密だというならば、決して誰にも話すまい。
「れいしん様にだって言いません!」
「そっか。じゃあ教えてあげるね」
拳を握り締めて真剣に誓うと、悪戯っぽい顔をした百合さんは、ぼくの耳に顔を寄せて、そっと小声で囁いた。
「あのね―――」

この邸には小人がいるのよ。




* 借りぐらしのしゅうえい *





その夏。
ぼくはれいしん様と百合さんと一緒に、紫州の山間部にある紅家別邸にひしょに来ていた。
ひしょとは、暑い貴陽から離れて、涼しいここ、湖畔の別邸で過ごすことだそうだ。
百合さんが教えてくれたとおり、むしむしと暑かった貴陽に比べて、湖を渡ってくる風や森が作る木陰に囲まれたこの邸は、どこにいても涼風が吹きこんでとても気持ちがいい。
そのことを百合さんに話すと「貴陽紅邸に比べると小ぶりだけど、いい邸でしょう」と笑っていた。
(小ぶりか…)
たしかに貴陽のお邸に比べると小さいかもしれないけれど、それでもぼくの目から見たらとっても立派なお邸だ。
初日に百合さんと一緒に探検した時は、庭院から邸内全部を見て回るのに丸一日かかってしまった。とちゅう、休み休みだったことを差し引いても、やっぱり立派なお邸だと思う。
ただ貴陽のお邸よりも古い感じがする。
そのことも百合さんに話すと、「絳攸は観察力に優れているわね」と褒めてくれた後に、この邸の由来を聞かせてくれた。
「この別邸はね、黎深のお爺様のお父様の代に造られたものなの。そう、ひいおじい様ね。貴陽本邸も建ててからずいぶんと経つけれど、あちらは代が変わる度にあちこち手入れをしてきているから、結構新しい場所が多いの。でもこの別邸は当時のまま、今日までほとんど手を入れていないのよ。だから年季が入っているでしょう?」
「はい、半蔀の飾り彫りも本邸と違うのでおもしろいです」
「よく見ているわね、絳攸。あれはね、当時、貴陽で流行っていた意匠なんですって」
貴陽本邸では花や鳥の彫りものをたくさん見かけるけれど、ここでは植物のつるが複雑に絡み合った模様が多い。 なるほどと開け放たれた半蔀に目を向けると、えらいわねと頭を撫でてくれた百合さんは、ぼくの背中をぽんと押した。
「さ、探検に行ってらっしゃい。私は仕事があるから一緒にいけないけれど、迷ったら大きな声で呼ぶのよ。すぐに誰か来てくれるから」
「はい! わかりました」
「小人さんを見かけたらよろしくね」
「………」
「ん? どうかしたの」
小人―――初日に百合さんから彼の話を聞いてから、ずっと気になっていた。
(本当にそんな人がいるのかなあ…)
少なくとも、街にいたときも、ぼくは一度もそんな人の話を聞いたことがない。言葉に詰まってしまったぼくを、百合さんは不思議そうに見ている。
(百合さんが言うんだから、きっと小人さんはいるんだろうけど…)
でも素直に信じられないぼくがいる。
それはきっと、この目でみたことがないからだ。
(疑っていると思われるかな)
嫌われたらどうしよう。
それは絶対に嫌だ。
なにか言わなきゃ。
でも何を言えばいいのかわからない。
「絳攸?」
「あの…。……。……」
「やだ。そんなに難しい顔しちゃって。ほら、笑って笑って」
焦れば焦るほど言葉が喉につっかえてでてこない。
押し黙ったぼくをみていた百合さんは、ふと笑い声を立てると、むにーっとぼくのほっぺを引っ張った。
「小人のこと、信じられない?」
「いいえっ。そういうわけじゃなくて…」
「いいのよ。私も突拍子もない話だと思うもの」
焦って涙目になるぼくの頭を優しく撫でて、百合さんは肩をすくめる。でもね、と続けた彼女は内緒話をするように声を潜めた。
「本当にこの邸には小人が住んでいるのよ。実際に、黎深のおじい様は彼に会ったんだって」
「えっ。ほんとうに?」
「うん。私が子供の頃、おじい様から教えてもらったの。黎深は知らない秘密なんだけど」
どうしてと聞き返そうとして、ぼくはすぐに口をつぐんだ。
なぜって、おじい様が、れいしん様にお話しなかった理由がなんとなく分かったからだ。
きっとれいしん様なら、その小人さんを放っておくことはないだろう。 一緒に暮らすようになってからまだそんなに経ってはいないけれど、本気になったれいしん様なら、小人さんを探すためにこの邸の床板や天井を全部引っぺがすことぐらい、簡単にやってしまう。
おじい様は、それを嫌がったのかもしれない。
ふに落ちて百合さんを見つめ返すと、だからね、と百合さんは微笑んだ。
「もし絳攸が小人さんと会うことがあったら、私にどんな人だったかこっそり教えて欲しいんだ」
「百合さんは会わなくてもいいんですか?」
「う〜ん、本音をいえば私もお話してみたい。でもなかなか難しいみたいだから。おじい様もね、毎年この邸に避暑に来ていたけれど、一度しか会うことができなかったって言っていたわ」
「そうなんですか…」
これは責任重大だ。
なんとか百合さんの希望を叶えてあげたいと思うけれど、会うことすら難しい相手では、そう簡単に話は進まないだろう。
うーんと考え込んでしまったぼくの頭を、百合さんはよしよしと撫でた。
「だからそんな難しい顔をしないの。私のことは気にしないでいいのよ。小人さんに会えたら、それはとても幸運なことだけれど、無理に探すつもりはないんだし。それよりも、絳攸、あなた最近お勉強ばっかりしているんだから、こんな時ぐらい外で遊んでらっしゃい」
「え、でも…ぼくは早くれいしん様のお役に立ちたくて…」
「いいから。子供は遊ぶものよ。この邸にいる間は勉強はいっさいナシ! わかったわね」
「は、はいっ」
「そうそう。よろしい」
念を押しされて思わず頷く。すると百合さんは満足そうに笑った。









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